農業者年金とは?
「農業者年金」とは、農業者年金基金法という法律に基づいて制度設計された、農業従事者に加入資格が限定された年金制度です。
自営業者の多い、農業従事者の年金は、強制加入部分は国民年金だけです。任意に加入して、将来もらえる部分を増やすための年金制度はいくつかあります。国民年金基金などもそのひとつです。ですが、農業者年金はこれらにないユニークな特色を多数持っているのです。
農業者年金の特徴・メリット
ユニークな特色の一つ目は、80歳までの支給が保証されているということです。
そして、二つ目に税制面での優遇があります。保険料は社会保険料控除の対象ですので、保険料の支払いが多くても、所得税が段階的に減っていきます。また農業者年金では、保険料を運用し運用益によって年金を確保しますが、この運用益も非課税となっています。
三つ目のメリットですが、国民年金基金と異なり運用益によって年金を支払いますが、仮に年金の運用に失敗したとしても元本が保証されています。この点は確定拠出年金と大きく異なる部分です。
農業者年金のメリットは、他にもあります。保険料について国庫補助が受けられる場合があるということです。これについては、特例付加年金の支給となります。
農業者年金の保険料支払いと支給日・支給額について
農業者年金は毎月の保険料は2万円から6万7千円で、加入者が自分で選びます。見直しも随時可能です。
農業者年金の支給月は「2月、5月、8月、11月」の年4回です。ただし、年金の年額が12万円未満の場合ですと、年1回、11月に支払われます。
各月の何日に支給されるか?年金支給日は各月の10日です。休日の場合は直前の平日になります。
※国民年金の支給月は「偶数月」ですが、これと混同する被保険者が多いのでご注意ください。
農業者年金 支給額
農業者年金の基本である老齢年金はいつから、いくらもらえるでしょう。65歳になればもらえます。老齢年金については年齢以外の要件はありません。
農業者年金は、賦課方式、つまり世代間扶養のために破綻した旧制度と異なり、積立方式となっています。加入者が積み立てた保険料を運用して、年金として支払うものです。新制度発足以来の利回り実績は、2.89%です。
農業者年金いくらもらえる?シミュレーション
農業者年金基金の公式サイトには、年金支給でいくらもらえるか、などが試算できるシミュレーションが設けられています。
氏名、性別、生年月日、加入月、保険料、利回り等を入力しますと、簡単に年金額が提示されます。
例えば、1968年4月生まれの男性が、2003年4月に農業者年金に加入し、毎月3万円の保険料を積み立てたという設定でシミュレーションをしてみました。利回りは過去実績にしました。そうしますと、年金年額が638,900円、平均的な生涯年金受給額が13,736,400円となりました。
農業者年金の支給開始は65歳からですが、65歳を待たず繰上げ受給も可能です。しかし、もらえる年金支給額は低くなります。逆に、支給開始を繰り下げをすると支給額は高くなります(多くもらえる)。
農業者年金は終身で受けられるものですが、先に述べました通り80歳までの金額が保証されています。80歳になる前に死亡しても、80歳までの年金相当額である「死亡一時金」が遺族に支払われます。しかも非課税である点もメリットとして挙げられます。
農業者年金の特例付加金制度とは?
もうひとつ、農業者年金の特例付加年金について触れておきます。
農業者年金では、条件により、保険料の国庫補助があります。毎月の保険料の最低額2万円が支払えない際に、補助が受けられ、補助額も年金額に反映されます。特例付加年金については、年齢以外に農業経営を継承し終えているという条件があります。
農業者年金の確定申告
次に、税制面で優遇されている農業者年金の確定申告について見ていきます。
まず、保険料を支払っている段階の確定申告です。保険料については、全額が社会保険料控除の対象となっています。
保険料を収入から差し引いて所得にすることができますので、課税対象となる所得の金額が下がります。それにより、所得税・住民税が安くなるわけです。
確定申告の際、農業者年金の保険料については証明書の添付は不要です。保険料の金額だけ記載しましょう。
次に、年金受給者の確定申告についてです。
現在、農業者年金の年金額については、すべての受給者が源泉所得税を控除されていませんので、農業者年金基金から送付されてくる源泉徴収票の控除額はゼロとなっています。
年金受給者の場合、確定申告は、「公的年金等の収入額の合計が400万円以下であり、公的年金等以外の所得が20万円以下」の場合は不要です。農業年金の年金収入だけの方なら、ほぼ確定申告の必要はありません。